【あらすじ】
世界の終わりは突然始まった。黒の海が大地を沈め、無数の「口」が全てを食い尽くしてゆく。終末から逃れ、天国のような孤島に着いた少女らは、遅れて流れ着いた、謎めいた漂着者らを助ける。しかしそれは、嘘と裏切りに満ちた殺し合いの始まりだった……!
以下、完全にネタバレです。未読の方は自己責任でどうぞ。
【第一章 いちばん近い島(ネタばれ感想)】
第一章自体が世界観とキャラクターの説明に終始しているので、この章にネタバレも何もないのですが、設定が突飛すぎてまずは状況を飲み込むのに時間がかかります。
また、主人公を含む少女たちが、実際には少女ではないんだろうなぁ(というか人間かどうかも怪しいw)という描写が散見されます。少なくとも「元世界」が現代日本じゃないことだけは確かです。ただし地球が舞台なのは間違いないようですし、日本やイギリス、ロシア、合衆国も存在するようです。
そして彼女たちのいた元世界は彼方からやってきた(?)無数の口に食いつくされ、どういうわけかそこから逃れた彼女たちだけが現世界の海岸に打ち上げられたとのこと。
天国にいちばん近い島
第一章のタイトルである「いちばん近い島」。何に近いって、天国にですよw 初(うい)曰く、ですが。
【第二章 X(ネタばれ感想)】
これは酷いwwwwwwww
いやぁ~、笑わせていただきましたwwww
中盤の展開、ややレズっぽさのある描写から繰り出される醜悪なバトルアクションには脱帽ですよ!!
あれ知ってます?『女子高生チェーンソー』。最高のB級映画なので、観たことない方はぜひ一度ご視聴ください( ´艸`) あの映画のラストシーンで、女子高生が○○○○するシーンがあるのですが、この作品はそれと同等かそれ以上の衝撃を与えてくれますwwwww
まあでも章タイトルが「X」なことを鑑みれば、オマージュしてるのは『遊星からの物体X 』ですよねw あとこの物語自体が『月光ゲーム』のオマージュ。色んな内容が混じっています。
いや、そのシーンの直前、結が未奈によってバールで頭を割られて(ここも、あまりの急展開に噴出してしまうこと請け合いw)、「青黒い」血が出ますよね。ここで読者は「ついにきたか~。やっぱりこの子たち人間じゃなかったんだな~」ってある意味納得するのですが、そんな腹落ち程度じゃ許してくれない超展開に、読者は置いて行かれないのに必死ですwww
第一章の丹念さはいったい何だったんだと思わせるジェットコースターっぷりwwwだけど、ちゃ~んと本格ミステリの枠からはみ出してはいません。このバランス感覚は素晴らしいです。
化け物の仲間になったのは誰か?
途中、気になる描写がありますよね。
正体を現す前の七瀬が結に対して、「仲間の中で、あの海に浸かった子はいますか?」と質問するシーン。
結は「1人いる」と答えますが、これは初のことです。第一章の灯台での会話で本人がそう語っており、彼女たちが決して嘘をつけないことを考えればこれは真実だと言えます。
そしてこの後の展開と相まって、読者には「あの黒い海に浸かってしまうと、化け物の仲間になるのでは?」という想像が働きます。未奈のセリフ、、「奴らには・・・汚されないで」から、汚される=海に浸かると連想できるからです。
しかし、ストーリーを読み進めると、どうやら汚されるとは海に浸かることではなさそうだとわかります。ただ、バトルフェーズで教室が停電したことにより、少女たちの中のいったい誰が化け物になってしまったのかがわからないというなんともやっかいな状況に。初も初以外も、化け物なのか仲間なのかがわからないまま今後のストーリーが進む・・・まるで人狼ゲームのような緊張感です。
ちなみに、結と新菜の2人は描写により確実に化け物ではありません。通常、一人称のミステリでは主人公は信頼できない語り手になるのですが、本作品においては「絶対に嘘がつけない」ルールが敷かれているため、主人公の見たものは必ず真実。そこだけは保証されているのです。これが本格ミステリとして本作を成り立たせる土台となるのですね。
<階段>ってなあに?
再び出てきた「階段」という単語。
「あたしたちが、<階段>を登らないようにーお前たちが、階段に毒を撒けるように!!(中略) 赤い向日葵が咲く前に。約束の階段が下りる前にーお前たちを必ず殺してやる!!」
これは結を殺害しようとした際に、未奈が叫んだ言葉です。約束の階段、という謎フレーズが登場しますね。
ところで、第一章にもこの階段というワードは登場しています。初が元世界で黒い海から逃げていたシーンです。
「階段を求めて駆けた。(中略)ただ必死に、階段を求めて駆けた。でも、私が求めるような階段は、なかった」
この文章の主語は、初です。そして原文には「私が求めるような階段」の部分にわざわざルビが振ってあることから、この階段が未奈の言う「約束の階段」と同義であることはほぼ間違いないでしょう。
未奈の遺言
「・・・大聖堂の上から飛ぶのが遅かった。空も真っ暗で、躯も衰弱して、力が弱っていたこともある。太陽なんて、もうどこにも無かったもの」
→彼女たちの行動エネルギーは太陽に関係している?
「赤い向日葵が咲いたなら、約束の階段が下りる」
→未奈が「以前の」孤島で目覚めた時に聞いた声。他の仲間たちも聞いていた、一言一句間違いなくそのとおりの声。未奈はそれを神の啓示だと呼んでいる。神の啓示があったのは状況が切迫していたから? 向日葵畑はこの孤島にもあるが、結たちは誰一人その啓示を聞いていない。階段=脱出路らしい。
「あの怪物に強姦された時点で、あたしたちはあの悪魔になる。怪物にされる。あたしたちの性格とか、記憶とか、そんなアイデンティティを全部保持したまま」
→まさに人狼。
「どうか信じ合って、この中の悪魔に勝って頂戴」
→少女たちの中に化け物がいることを示しています。人狼ゲーム開幕。
ゲームのルールが全て明かされた。
この時点で本作のゲームルールが全て明かされました。
①私たちの中には(おそらく)2人の化け物が混じっている。
②化け物は外見・記憶・性格・アイデンティティ全て本物と見分けがつかない。
③化け物は生まれてから強姦されるまでの全ての記憶を保持している。自分がヒトの躯から強姦によって化け物になった事実も正しく認識している。
④階段を下りるまでに化け物を全て見つけ出して殺さなければならない。
⑤私たちは決して嘘をつけないが、化け物は嘘をつける。
⑥化け物に強姦された人物も化け物になる。
⑦化け物は自分が強姦した被害者の記憶を吸収する。
⑧被害者側の化け物は加害者側の化け物の記憶を吸収しない。
⑨化け物は、化け物とそれ以外とを識別できる。
⑩化け物は飛行能力は持たない液体生物のようなイメージ。
⑪化け物の伸縮限界は定かではないが、教室2つ分あれば絶対につかまらない。
⑫化け物同士は連携を取ることもあるが、意思疎通は言語による。
<前提条件>
①我々も化け物も、簡単な器物なら(おそらく無から)作り出すことができる。
②我々も化け物も、確実に殺すためには頭部を徹底的に破壊するしかない(我々はもう少し簡単に死ぬかもしれない?)。
【第三章 われら接吻するときに】
(;゚Д゚)
【第四章 光と闇のアクシア】
(;゚Д゚)
(;゚Д゚)
(;゚Д゚)
えええええええ・・・・・。
いや、確かに本格ミステリです。これは、まごうことなき本格ミステリでした。
何も書きたくはありません。いちおう読みながら感想書いていたのですが、読み終わった時に第3章まで遡って全部消しました。
ちなみに読後感は、意外にも悪くありません。ガツンときすぎて頭がクラクラするだけです・・・。1つだけ言えることは、読んで損はないということ。
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